展覧会「デ・キリコ展」の開催を記念して、9月15日(日) 午後2時より、神戸市立博物館でギタリストのマルコ・カッペッリ氏によるリサイタルを開催します。
20世紀美術を代表する巨匠の1人であるジョルジョ・デ・キリコに捧げるひとときをお楽しみください。
イタリア・ナポリ出身、ニューヨーク在住のギタリスト。バーゼル音楽院アカデミー(スイス)をクラシック・ギターで卒業。1990年代半ばからソリストとして精力的に活動。厳格に記譜された現代クラシックの作品演奏からフリー・インプロヴィゼーションに至るまで、さまざまな分野で活躍。
これまでにエンリコ・ラヴァ、ジョヴァンニ・ソッリマ、マルクス・シュトックハウゼンをはじめ多数の国内外アーティストと共演。作曲家でもあり、ダンス、演劇、映画のための音楽を手掛ける。中でも、デザイナーのアート・シュピーゲルマン、俳優のジョン・タトゥーロとのコラボレーションによるアニメーション映画『消えたタワーの影のなかで』は特筆に値する。
Tzadik、Da Vinci、Mode Recordsなどのレーベルで多数のCDをリリース。2022年には、ナポリとニューヨーク間の音楽的架け橋となるレコードレーベル 41st Parallel Recordsを設立。また指導者としてパレルモの音楽院 ” Vincenzo Bellini “とニューヨークのコロンビア大学で教鞭を執る。
リサイタルプログラム
作者不詳(紀元前2 世紀頃):
セイキロスの墓碑銘
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ (1895 – 1968):
「ギターのための備忘録」より 第一練習帳「インターバル」
オットリーノ・レスピーギ (1879-1936):
ギターのための変奏曲
ジャン・フランチェスコ・マリピエロ (1882-1973):
前奏曲
エルザ・オリヴィエーリ=サンジャコモ(エルザ・レスピーギ:1894-1996):
ギターのためのふたつのカンツォーネ
ジョルジョ・フェデリコ・ゲディーニ (1892-1965):
協奏的練習曲
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ (1895 – 1968):
悪魔的奇想曲Op.85 パガニーニへのオマージュ
事前申し込み・抽選制、詳細を下記リンク先で必ずご確認ください。
楽曲解説 (マルコ・カッペッリ)
画家兼彫刻家のジョルジョ・デ・キリコに捧げるこの演奏プログラムは、明らかな、あるいは隠された関係性と追憶の石畳の小道を辿るものです。
最初の一歩はデ・キリコ生誕の地であるギリシャからです(1888 年ギリシャのヴォロス生まれ)。
「セイキロスの墓碑銘」は現存している世界最古の楽曲とみなされています。旋法音楽が示唆するアルカイックな謎は私達をデ・キリコの夢の世界や彼の形而上学的な絵画に引き入れます。その概念は彼の作品「ある秋の午後の謎」についてデ・キリコ自身が語った言葉によく表されています。「私は長く苦しい腸の病気からなんとか回復したばかりの、ほとんど病気のような弱々しい状態にあった。そして、私を取りまく自然のすべて、建造物や噴水の大理石までもが、まるで病み上がりのように目に映った。秋の生あたたかく愛のない太陽が、彫像とともに聖堂のファサードを照らしていた。その時、あらゆるものを初めて見ているかのような不思議な感覚に陥った。」では、先に進んで、フィレンツェの偉大な作曲家:マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコの「ギターのための備忘録」第一練習帳に導かれるままに、創造の形式を再発見していきましょう。そこから選んだ曲は音楽芸術の基本的要素をテーマにした「インターバル」です。
ジャン・フランチェスコ・マリピエロは、ここではギターのための変奏曲と前奏曲で紹介します。
デ・キリコは確かにレスピーギとともに働き、「主の降誕の賛歌」の衣装をいくつかデザインしました。
おそらく、同作品のマリア役を務めたレスピーギの妻:エルザ・オリヴィエーリ=サンジャコモとも面識があったことでしょう。彼女の作品「ギターのためのふたつのカンツォーネ」を、今回の演目に加えたいと思います。家父長制文化の影響で、しばしば芸術史の影に覆い隠された女性の天賦の才が今日ようやく議題に上ります。この現代絵画はジョルジョ・フェデリコ・ゲディーニの「協奏的練習曲」で完成します。ゲディーニはその芸術様式と経歴から、デ・キリコと同じ文化的土壌に属していたと思われます。それはあたかも、夢見てはすぐに消えていく調和の歪んだ舞台裏で動く、デ・キリコのマネキンの音を聴いているかのようです。このプログラムは、デ・キリコの絵画の最後の足跡を表すべく、マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコのパガニーニへのオマージュ「悪魔的奇想曲」で締めくくります。1950年代頃、デ・キリコは、批評家たちの否定的な意見にもかかわらず、常に素晴らしい品格と熟練をもって形而上絵画を捨て、新古典主義の道のりを再発見しようとしたのです。