フェリーニ監督の映像魔術をゴージャスな歴史劇で堪能
ローマのメジャー・スタジオであるチネチッタを拠点に活躍した巨匠フェデリコ・フェリーニ監督。2020年はその生誕100年にあたり、フェリーニ監督が、歴史劇というジャンルで、その奔放なイマジネーションを炸裂させた2作品を取り上げます。
1950年の『寄席の脚光』以降、40年にわたって『道』『カビリアの夜』『甘い生活』といった名作を手掛けたフェリーニ。その独創的な作品群は映画のみならず、音楽、絵画、舞台、写真といったあらゆるアートに多大な影響を及ぼしました。
フェリーニ生誕100周年を記念し、「京都ヒストリカ国際映画祭2020」において、次の4Kデジタルリマスター版のフェリーニ作品2本を上映いたします。
▶ 詳細および最新情報は同映画祭の公式HP(https://historica-kyoto.com/)をご覧ください。
カサノバ
巨匠フェリーニが性を通して女性に奉仕する カサノバのドンキホーテ的人生を描く
<作品情報>
監 督 フェデリコ・フェリーニ
出 演 ドナルド・サザーランド、セシル・ブラウン、ティナ・オーモン、マルガレート・クレマンディ
制作国 イタリア
制作年 1976
時 間 155min
<あらすじ>
1758年、カーニバルの喧騒に沸き立つヴェネツィア。カサノバは尼僧マッダレーナと会うようにとフランス大使館から手紙を受け取る。指定されたサン・バルトロ島に着いた彼はフランス大使の別荘ヘと案内される。マッダレーナは大使の情婦で、覗き趣味の大使のために、情交を披露したいとの事だった。“黄金の鳥”を羽ばたかせ、期待に応えるカサノバ。「女性のために生まれてきた」、年齢や容姿を問わないエキセントリックな博愛精神に囚われた彼の女性遍歴が始まる。伯爵夫人、お針娘、公爵夫人、娼婦の母娘、そして馬車の御者との絶倫競争、彼が最後に到達した境地は……。
サテリコン
”神なき時代”の人間を描く 絢爛で壮大な映像のオペラ!
<作品情報>
監 督 フェデリコ・フェリーニ
出 演 マーティン・ポター、ハイラム・ケラー、マックス・ボーン
制作国 イタリア
制作年 1969
時 間 129min
<あらすじ>
キリスト教が広く人々に浸透する以前の古代ローマ。二人の若者-エンコルピオとアシルトは、美少年ジトーネをめぐって争っていた。ジトーネに去られたエンコルピオはやがて、年老いた詩人・エウモルポに誘われ大富豪トルマキオの大饗宴に足を踏み入れる。延々行われる成金趣味の教養もない宴で、トルマキオの逆鱗に触れて処罰されそうになったエウモルポを助け宴会を抜け出したのも束の間、エンコルピオは兵士によってガレー船へ強制連行される。そこで思いがけず船の主人で皇帝に使える将軍リーカに見初められたエンコルピオは、抵抗できず彼と結婚することになる。しかし、皇帝の反乱軍によって船は占拠され、将軍リーカは殺害されるのだった。船を降りたエンコルピオは再び自由の身となったが……。
<みどころ>
詩人であり皇帝ネロの寵臣でもあったペトロニウスが書いた小説「サテュリコン」をフェリーニが映像化。歴史劇の範疇を超えた、フェリーニ独自の解釈と演出が冴え渡る作品で、見るものを圧倒する。冒頭からラストまで見せつけられる、壮大で完璧な美術や衣装。オペラの如く展開する物語世界。ローマ郊外の撮影所チネチッタで作られた、夢のような絢爛な世界が余すことなく味わえる。古代の物語世界を映像化するため、フェリーニは自身の宗教観、倫理観などを取り払い、感情移入することなく純粋に対象を表現することこそ、誠実で魅力的な映画づくりの態度だと考えていた。その言葉通り、主人公エンコルピオは様々な欲望に身を任せ、苦難に対峙し立ち向かっていく。
監督情報
フェデリコ・フェリーニ
(1920〜93)[監督] 伊リミニ生。子どもの頃、サーカスに魅入られ、一座について行って何度も家出状態になったという。1939年、ローマで似顔絵描きやラジオの構成を始める。アルド・ファブリーツィ一座の座付詩人としてドサ周りをしたのもこの時期で、彼を通して映画界に近づく。戦後、ロベルト・ロッセリーニ監督の『無防備都市』(45)で脚本に協力、ネオ・レアリスモの渦中の人になってゆく。監督3作目『青春群像』(53)はヴェネツィア国際映画祭で大絶賛を受け銀獅子賞を受賞。以降、ローマのチネチッタ撮影所を本拠に『道』(54)、『甘い生活』(60)、『8 1/2』(63)等を発表、イタリアを代表する監督になる。