旋回するふたりの男性
上がる速度と息、終わらないダンス
ダンスにおけるこれまでの功績を評価され、ヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子功労賞を受賞したアレッサンドロ・シャッローニが出会った時にはすでに、そのダンスは消滅の危機に瀕していました。
公の場で未婚の男女が共に踊ることを許されなかった1900年代初頭のボローニャで、男性のみによって踊られはじめたポルカ・キナータ。女性にアピールするべく回転の速さがこぞって競われたアクロバティックなそのダンスは、時代が下るにつれ男女のダンスが許容されていったことと難易度の高さがあいまって徐々に廃れていきました。オンラインに投稿された動画をきっかけにシャッローニがリサーチを始めた時点での踊り手は、わずか数名だったといいます。シャッローニはこの失われつつあるダンスに魅入られ、パフォーマンスとワークショップからなるポルカ・キナータ復活に向けてのプロジェクトを開始しました。
2人のダンサーは、膝を曲げ、腰を落とし、見つめ合ったまま回転します。互いの腕をつかむ力が少しでもゆるんだら倒れ込んでしまうに違いない、というスリルとは裏腹に、わたしたちはダンサーたちの笑みを見ます。つまり、相手を信じ、自らの体重を委ね、踊ることの喜びを。
KYOTO EXPERIMENT 2024
「ラストダンスは私に」アレッサンドロ・シャッローニ
Kyoto Experiment e Dance Reflections by Van Cleef & ArpelsIstituto Italiano di Cultura di OsakaAuditorium, Kyoto Art Center